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BINGOの乗組員の皆様へ
成瀬英樹
成瀬英樹
12月31日 15:16

皆様、今年一年、本当にお疲れ様でした。
 

世界中の人々が、申し合わせたように「せーの」で呼吸を整え、時間をリセットする。大晦日というシステムは、考えてみればなんと便利で、なんと慈悲深い発明でしょうか。 本来、時間は円環のように途切れることなく続いていくものです。「始点」と「終点」は同じ場所にあるはずなのに、僕たちはそこに境界線を引き、あらゆることに「終わりと始まり」を決めることができる。「ここからまた始められる」というこの「希望」、いや、「望む」という「動詞」こそが、僕たちが手にした最大の武器なのかもしれません。
 

今、僕はいつものカフェで、愛用のMacBook Airに向かっています。(そして今、エスコンフィールドのライトスタンド1Fのハイカウンターでこれを推敲しています。)(そしてまたその文章を、仕事部屋で推敲しています。) 指先でキーを叩き、「言葉」を紡いで「メッセージの伝達」を試みていますが、普段の僕の主戦場は「音楽」です。

 

しかし、この「音楽」という言葉の意味も、実に広大です。 そう、広い意味で括れば、僕とモーツァルトは同じゲームをしていることになります。彼も僕も、職業欄に書くならば、同じ「作曲家」かもしれません。けれど、モーツァルトと僕が同列だなんて、そんな冗談は当然ながら通用しません!

 

今、僕が主宰する「A1グランプリ」の決勝に向けて、出場されるソングライターの皆さんが作品と格闘している姿を想像しています。 僕が皆さんにリクエストしたのは、「誰もが聴いたことがあるような親しみやすさを持ちながら、誰も聴いたことのない世界を歌う」という、ある種の矛盾への挑戦です。 そんなことは、論理的には不可能です。しかし、そこに巨大な山があることを「知って登る」のと「知らずに歩く」のとでは、見える景色がまるで違うと思うんですよ。

 

僕は常々、ポップスとはぶっちゃけていうと「CMソング」であると考えています。特定の商品を売るためのCMという意味(だけ)ではありません。 人間の心の奥底にある、優しくて懐かしい感情を「切なさ」と呼ぶのなら、ポップスとは、それぞれの形をした「切なさ」を世の中に問うためのCMソングなのではないか? 「あなたの中にも、この感情がありますよね?」と、見えない誰かの心に呼びかけるための装置と考えたら?

 

そんな「切なさ」について考えていた年の暮れ、本屋の棚に積まれていたポール・オースターの遺作『バウムガートナー』を手に取りました。 普段は読書スピードの遅さに定評があり、集中力の欠如に関しては天性の才能さえ自負している僕ですが、この本に関してはあっという間でした。読み終えるのが惜しくて、結末の数ページを残して一晩寝かせたほどです。

 

なぜ、これほど深く入り込めたのか。それは70歳の主人公に、僕自身を容易に重ね合わせることができたからでしょう。 「老齢男性の孤独」と言うと重苦しく響くかもしれませんが、僕のように人生の秋口に差し掛かった独身男性ならば、きっと頷いてくれるはずです。「孤独」と「さみしさ」は、似て非なるものである、と。孤独とは、決して惨めなものでも、寂しいものでもありません。それは単なる「途中経過」であり、ひとつの「状態」に過ぎないのです。

 

読み進めるうちに、僕たちはふと気づくのです。この物語の主人公であるバウムガートナー氏、彼もまた、決して本当の意味での「孤独」ではないのだと。 なぜなら、彼のそばには常に「不在という名の存在」があったからです。かつて心を通わせた愛が、確かにそこにあった。そして「彼(ら)」は、その形のない感情や記憶を「ある手段」――そう、あえて明かすなら「文章」という手段で――鮮烈に保存することができていたのです。 肉体は消えても、言葉に刻まれた愛は風化しない。書くことによって過去を現在に繋ぎ止めている彼を、誰が「ひとりぼっち」だと笑えるでしょうか。

 

そう考えると、僕たちの営みも似ています。 形のない感情を、音楽や言葉にして保存する。そして、これを読んでくれているあなたのおかげで、僕は今もこうして「保存」と「伝達」という大好きな音楽の仕事に就くことが出来ている。

 

今年、2025年に起きた数々の奇跡――そう呼んでも決して大袈裟ではない出来事たち――を、こうしてリアルタイムで伝えられることが、嬉しくてたまらないのです。

 

人生を大航海に例えるなら、ようやく船の整備が終わり、信頼できる乗組員たちが揃った。今、僕はそんな清々しい心持ちでいます。 現代のすごいところは、実際に同じ船に乗り込まなくても、航海を共にできることです。離れた場所にいても、同じ風を感じ、共に戦うことができる。

 

今のあなたの状態が「孤独」であろうとなかろうと、人は誰もが自分の中にある絶対的な「孤独」と戦っています。 だからこそ、その孤独な場所にそっと手当てをしてあげられるような存在でありたい。 それこそが、僕の考える「ソング」であり、ソングライターの使命だと、少しキザですが本気でそう思っています。

 

山は高い。海は広い。 けれど、僕たちは一人ではありません。

 

皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。


1月3日、20時、「A1グランプリ」本選でお会いしましょう!

「A1グランプリ」が暴いた真実と、持たざる者の生存戦略
BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン 成瀬英樹ゼミ マンスリープラン 旧プロ養成コース
成瀬英樹
成瀬英樹
12月29日 17:14

「A1グランプリ」が暴いた真実と、持たざる者の生存戦略


 

――まずは「A1グランプリ」、予選お疲れ様でした。参加者への連絡等は進んでいますか?
 

成瀬: ええ。全出演者へのお礼と、決勝に進んだ作家さんへのコンペ詳細はすでに送信済みです。ただ一人、「たのも」さんだけメールが戻ってきちゃったんで、X(旧Twitter)でお知らせしました。もし他にも「届いてないよ」って方がいたら、至急連絡をください。ちゃんとしたアドレスに送ってるはずなんですけどねえ(笑)
 

――(笑)。それにしても、かなりの盛り上がりでしたね。
 

成瀬: そうですね。ご覧になった方にもこの面白さが伝わっていれば嬉しいです。何より、出場した皆さんは相当ヒリヒリしたんじゃないですか? 成瀬ゼミやマイソングプラン、BINGO Songwriting Clubからのエントリーはもちろん、外部からの果敢なチャレンジもあって。審査する側も大いに楽しませてもらいました。
 

――全体のレベルはいかがでしたか?
 

成瀬: 正直に言っていいですか? ……みんな、真面目すぎるんですよ。そんな優等生みたいな顔してちゃ、この業界の詐欺師みたいな作曲家たちには勝てやしませんぜ。
 

――厳しいですね(笑)
 

成瀬: 事実ですから。今回の入賞トップ2組には、まだ稚拙ながらも明確な「ルーツ」と「スタイル」が感じられました。でも、それ以外の方は「なんとなくいい曲」を書いているだけで、飛び抜けた人がいなかった。「今回たまたま出来が良かったか、そうでもなかったか」、その程度の差しかありませんでしたね。
 

――「いい曲」なのにダメなんですか?
 

成瀬: ダメです。「ふつうにいい曲」なんて誰でも作れる時代なんですよ。いったいあなたの「何」を表現したいのか。それを考え続けないと。「地位」を築いたアーティストたちが、どんな経緯で世に出てきたのか徹底的に研究してほしいですね。そうすれば「プロデュースする視点」が生まれる。「今のあなた」をプロデュースして世に問えるのは、あなたしかいないんですから。
 

――なるほど。AIを使ったコンテストですが、結局は「人間力」が問われたと。
 

成瀬: そういうことです。今回の「A1」は、本質的にはAIのコンテストじゃなく、「楽曲の強度」を競う場になりました。みんな同じ「刀(ツール)」を持ったわけでしょう? 逆に言えば、道具が同じだからこそ、言い訳がきかない。ソングライティングの根幹や、その人の「真の実力」が残酷なほど見えてしまう。でもだからこそ、下克上も起きやすいんです。
 

――チャンスでもあるわけですね。
 

成瀬: 今までいろんな理由で認められなかった「小さな才能」を世に問うなら、今しかないですよ。はっきり言いますが、AIがもっと普及したらどうなると思います?
 

――どうなるんでしょう?
 

成瀬: すでに才能と地位を持っている人たちの「一人勝ち」になります。これは間違いない。「すごいやつ」にAIが掛け算されるんだから、勝てるわけがない。だからこそ、その「持っている奴ら」が本気で気づく前に、僕はみんなにそっと教えてるんです。「今のうちに、早く全振りしろ」って。
 

――AIに全振りしろ、と。
 

成瀬: ええ。AIはズルをする道具じゃない。今回きっちり差がついたのがその証拠です。もし自分が「持っていない側」だと思うなら、四の五の言わずにAIにベットすべきです。そして、「気がついた人」たちと一緒に実験していきたい。結局のところ、目指すのはソングライターとして一流になること。それは一生かけて追いかけるものですからね。

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年末感のない年末
成瀬英樹
成瀬英樹
12月26日 14:30

おはようございます!!

 

「A1グランプリ」の締切が本日でした。たくさんのエントリーに、心から感謝いたします。僕自身も審査員という立場ではありますが、音源を事前に確認することなく、そのまま予選会に臨みます。ぶっつけのほうが、やっぱりおもしろいですものね。

 

基本的には、すべての楽曲を生配信で聴きながら、ブラッシュアップのご提案をさせていただいたり、感想をお伝えしつつ、最終審査に残る「10組ほど」を決定していきます。審査の基準はとてもシンプルで、「一緒に仕事をしてみたい人」。決勝では「お題」に向けたコンペになりますからね。

 

明日12月27日(土)20時から、生配信を予定しております。A1グランプリの最初の「音」が鳴る瞬間です。ぜひ、お楽しみに。

 

昨日もそんなわけで、ゆっくり過ごさせていただきました。今、ゼミ生のみんなの顔を見てしまうと、何か別の感情が生まれてしまう(A1、がんばってますか? 大丈夫ですか? ってね)ので、A1期間中は、少し距離を置かせてもらっています。

 

ご応募数は19曲。いやあ、実にちょうどいい。これ以上多かったら、「全曲予選生配信」というコンテンツ自体が成立しなかったかもしれないし、生配信まであえて試聴しなくても、粗製濫造を心配する必要はないと感じています。あくまで直感ですが、今回はその直感を信じています。

 

ここから、そうですね、半分くらいの方に絞らせていただくことになると思います。それも実際に音を聴いてから、審査員のみなさんと相談しつつ、丁寧に進めていきます。

 

いつものカフェで、これを書いています。暖かい店内。外では、激しめの雪が降り出しました。娘に「来月そっち行くよ」とLINEしたら喜んでくれて、こっちまで嬉しくなります。小沢健二さんの『悪女』は最高です。

年末感のない年末です。

2000年の歌声とAIトラックの融合。『神戸珈琲物語』とビートルズと滑らない靴
成瀬英樹
成瀬英樹
12月25日 12:52

おはようございます!
 

昨日のクリスマスイブ、みなさんいかがお過ごしでしたか。僕は静かに音楽を聴いて過ごしましたよ。スタン・ゲッツとか、ソニー・ロリンズとか、それこそビル・エヴァンスとか、そんなものを聴いていたかと思えば、いきなりビートルズの最新ミックス『赤盤』をじっくり聴き込んだり、『アビー・ロード』に舌鼓を打ったりね。新しいミックスの『アビー・ロード』も、久しぶりに聴くと、なかなかいいですね。
 

それもこれも新しいイヤフォンに感覚を馴染ませるためです。古いレコードの音もこのイヤフォンで聴くと新しい発見があるんだよね。
 

さて、昨日今日あたりの僕の街は、積もった雪が一旦氷化して、スケートリンクを歩いてる状態にならざるを得ない局面もちょいちょい出てきてます。そんな時、僕の新しい「滑らないアシックス」の登場だ。
 

僕の「アシックス」には底面に秘密があって、それがどんな秘密だったか言語化できるくらいには覚えていないんだけど、アシックスの店員さんによると「ガラス的な何かが底面の秘密であり、それらはほとんどの場合、氷上でも滑ることはない」という意味の総体を僕に伝え残してくれた。彼女が言うように、今年僕はまだ一度しか転んでいない。
 

さて、昨日公開になった僕たちFOUR TRIPSのニューリリース、楽しんでもらえましたか? まだの方はぜひ。クリスマス限定で公開して、明日からは「限定公開」にする予定です。引き続き聴きたい方はリンクをブックマークしておいてくださいね。



 

この『神戸珈琲物語』は2000年のあの悪名高き「沖縄修行時代」に書いた曲です。aiちゃんのメロディに僕が歌詞をつけた。当時作ったデモはロン・セクスミスの曲のブレイクビーツを使ったシンプルなものだった。そのデモから抜き出したボーカルと、Suno AIで生成したソウルっぽいトラックを初田くんにミックスしてもらったのだ。とても気に入っています。
 

それにしてもですよ。この「編み物をする老婆の向こうで、暖炉の炎が揺れている」動画は、ゼロから作って数十分で完成しました。AIのサブスクに課金はしましたが、ほとんどタダみたいなものです。それに、「なるほどこれはこうやって使えば長い動画にすることもできるな」という気づきももらえましたよ。
 

だってさ、半年ほど前にリリースしたこの動画、図案は僕が生成したものだけど、この「目を動かす」だけで数万円必要だったんだよ。これに数万払っていたんだ……わお。何時代やねん、って思うよね。
 

いよいよ明日、「A1グランプリ」の締め切りです。明後日27日の20時とかくらいから、予選生配信もやりますからね。どんな曲が集まるのか、とっても楽しみです。
 

そんなわけで、年末年始はありがたいことに色々と忙しくなりそうです。今日もゆっくり美味しいものでも食べて、図書館にでも行きます。

クソタレな気分蹴飛ばしたくて
成瀬英樹
成瀬英樹
12月24日 11:07

いいかい、これからは昨日の話をしようと思う。別に僕の生い立ちとか、デヴィッド・カッパーフィールドみたいな退屈な話をするつもりはないよ。ただ昨日、僕が何を感じたかって話だ。
 

朝、録画してた王貞治さんのドキュメンタリーを観たんだ。王さん、85歳だぜ。それなのに、まるで聖人みたいな優しい顔をして、子供たちに野球を教えてるんだ。それを見てるだけで、なんだか胸の奥がグッときちゃってさ。僕は巨人のファンとかそういうんじゃ全然ないけど、王さんだけはやっぱり別格なんだ。今の子供たちにとっての大谷翔平みたいなもんさ。正真正銘のヒーローなんだ。昭和43年生まれってのはそういうものさ。
 

番組の最後の方で、インタビュアーが「どうして王さんはそんなに野球が好きなんですか?」なんて、いかにもな質問をしたんだ。そしたら王さんは、なんと食い気味にこう言った。「それは難しいからだよ」ってね。 いいか、「楽しいから」じゃないんだぜ。「難しいから」夢中になるんだってさ。それを聞いた瞬間、なんだかわかんないけどさ、僕は救われたような気がしたんだ。
 

テクニクスの新しいイヤフォンを買った。AZ100っていう評判のやつだ。音を聴いて、僕はぶったまげたよ。なんてったって深みがあるんだ。今まで一体何を聴いていたんだろうってくらいだよ。でもね、そのせいで気づいちまった。僕の左耳の調子がまたちょっとおかしいってことに。
 

気休めにiPhoneアプリの聴力検査をやってみた。経験というのは恐ろしいもので、見事に予想通り、左耳の高い帯域の聞こえが良くない。 僕は昔からそうなんだ。強いストレスを感じると、すぐに耳にきちゃう。TRFやAAAの仕事が決まった時もそうだし、『君はメロディー』の時もそうだった。自分にとって最高に素敵で、デカいチャンスが来たときほど、僕の体はビビって耳を塞ごうとするんだ。皮肉な話だろ? 逆境の時はピンピンしてるくせに、順風満帆になるとこれだ。
 

ま、「だいたい聴こえてたらいいんだよ」くらいに、鷹揚に考えることにしたんだ。強引に四捨五入したらもう60歳だぜ、多少は聞こえも悪くなろうってもんだよな。それに耳ってのは、酷使しすぎるくらいに酷使してきたからね。 新しいイヤフォンのLから高音でタンバリンが聴こえると幸せな気持ちになる。エレピのナイスなオブリガートが聴こえてきたら、もう何もいらない。大丈夫。聴力検査なんて、気にする必要はないぜ。
 

だから昨日は、レッスンを全部キャンセルさせてもらった。それに、ゼミ生たちも一年の、いやここまでの作曲修行の発表&力だめしの場である「A1グランプリ」を控えてる。彼らに余計な手出しをしないという意味では、時期としてはちょうどよかった、とも言えるかもしれないな。
 

そう。ゼミ生だろうが、そうでなかろうが、Sunoという同じツールを使っての勝負「A1グランプリ」。ゼミ生以外のメンバーからも楽曲が届いてる。もちろんBINGO以外の方からもな。「いい曲かどうか」、それが全ての審査対象だ。 石崎”バッハ”光、白井”アヴァンチュール”大輔、そして成瀬”君メロ”英樹というタイプの違う作曲家が、それらの曲にどのような感想を抱くのか。楽しみにしててくれよな。予選生配信は12月27日の夜にやる予定だからさ。
 

そんなわけで昨日の午後、僕はバスに40分揺られて、アウトレットまで行った。ずっと履きつぶしてるリーバイス501のポケットに穴が開いてたから、修理に出すためさ。 修理代は6,000円だった。数件先にリーバイスのショップがあったから覗いてみたら、新品のブラック501がセールで5,500円で売ってた。 修理するより新品を買うほうが安いんだぜ。笑っちまうよな。
 

でも、僕は結局6,000円払って、穴の開いたやつを直しつつ、新しい501も一本買ったんだ。どうしてかって? うまく言えないけど、たぶんそれが僕なりの「付き合い方」なんだろうと思う。あと、501をずっと履き続ける理由も、自分ではわからないんだ。
 

家に帰ったら、小沢健二さんの日比谷野音でのライブアルバムが届いていた。アナログオンリーで発売されたもので、いわゆる「卓から直」のライン音源。主にミュージシャンたちが演奏確認用の「同録」をそのまま出したものだ。 音のバランスも、もちろんミックスも修正できないから、これはものすごく「生」な音源なんだよ。そういえば、あの名作『ジョアン・ジルベルト/ライブ・イン・トーキョー』も「同録」をそのままリリースしたものだったな。
 

そうなんだ、僕にとって小沢さんは「今、ここにあってほしい音楽」を聴かせてくれる人なんだ。この人のメッセージを受け取ることができる世界が当たり前のものじゃないって僕たちは知っているから、余計に感じ入ってしまうんだよ。この凸凹した美しい一瞬の演奏に。小沢さんの最高傑作だよ、まったく。これをアナログオンリーで出すってのが、それこそが、小沢健二なんだって思うよ。
 

知ってるかい? 小沢健二さんと僕は同じ年に生まれたんだ。だからどうって話じゃないんだ。ただそれだけさ。いや、きっと彼も、王さんのホームランに胸ときめかせた子供だったんじゃないかなって考えたら、ちょっとだけ嬉しいじゃないか。