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歴史の一部に
成瀬英樹
成瀬英樹
12月7日 7:40

一昨日夜は、湘南時代によく通っていた平塚のレコードバー「Hobo」へ、久しぶりに足を運びました。ここのマスター、家永さんは、僕のアルバム『Kimi Wa Melody』のジャケットを描いてくれた恩人です。JBLのスピーカーで浴びるジョン・レノン。数時間、聴き手の心を直接刺激するその魅力を、あらためてドカンと感じました。爆音最高。いやあ、本当に気持ちよかった。
 

そして昨日は、日本武道館。AKB48の20周年記念ライブ、昼・夜の両公演を見届けてきました。昼公演は現役メンバーによるツアーファイナルで、20年の歴史を彩る「ヒット曲メドレー」の中、2007年代表として『BINGO!』、2016年代表として『君はメロディー』の2曲が選ばれ、さすがに心が沸き立ちました。ビートルズも、チープ・トリックも立った、武道館という憧れのハコで、自分の作ったメロディーが、20年の歴史の節目として鳴り響く。素晴らしいステージ演出も相まって、もうね、涙が止まりませんでしたよ。
 

夜公演には、指原さん、たかみなさん、小嶋陽菜さん、柏木由紀さん、峯岸みーちゃんらOGが集結しました。みんな、僕にしたら同志みたいなものです。2007年、『BINGO!』をシングルに採用いただき、オリコン6位まで上がったんだけど、6位、ですからね。そこから1位になるまでの苦難の道を、僕も一緒に歩んできました。そんな中、指原莉乃さんは『BINGO!』をオーディションで歌って、AKB48に合格するんです。わお。歴史だね。
 

圧巻だったのは、OGと現役で披露した現役AKBソング『根も葉もRumor』。OGたちが、あのハードなダンスを、現役のキレでビシッと決める。ああ、これがAKB48なんだった。この本気感。魂を見せつけられた気がしました。初期のAKBなんて、曲を書かせてもらっていた僕から見ても、歌もダンスも、おしゃべりだって、本当にひどいもんだった(笑)。でも、その「何もなかった少女たち」が、泥だらけでエンターテイナーへと駆け上がっていく様こそが、僕たちの心を震わせたんだよ。最初から完成されている今の現役の子たちには、また別の難しさがあるのかもしれない。でも、昨日のステージは、歴史の重みと新しい光が交差する、本当に素晴らしいライブでした。
 

そんな神曲たちの本編ラスト、最後に歌われたのは、僕の曲『ひこうき雲』でした。前日のOG公演でも、アンコールで歌ってくれていたそうで、2日連続、武道館。20周年のフィナーレに、この曲を選んでくれたこと。作曲家として、歴史の一部になれたことを誇りに思います。AKB48、20周年、本当におめでとう。これからも、その物語を見続けさせてください。


さあ、そして。今日はいよいよ「BINGOパーティー」です。皆さん、笑顔だけ持ってきてください!と言いたいところですが、会費は現金で持ってきてください!(笑)会場で会いましょう。

そのメロディを、AIに渡すな ――「A1グランプリ」前夜・哲人と青年の対話―― 第一夜: 音楽は誰のものか
成瀬英樹
成瀬英樹
12月3日 12:30

そのメロディを、AIに渡すな
 

――「A1グランプリ」前夜・哲人と青年の対話――
 

第一夜: 音楽は誰のものか 

 

青年: 先生、単刀直入にお聞きしますよ。あなたは「音楽の死」を招くつもりですか?
 

哲人: 穏やかではありませんね。なぜそう思うのですか?
 

青年: 「A1グランプリ」のことですよ! 生成AIを使った作曲コンテストだなんて。AIに曲を作らせて、人間は何をするんです? ボタンを押すだけ? それはもはや「創作」とは呼べない。ただの「出力」です。僕は認めない。絶対に認めませんよ!
 

哲人: ふふっ。あなたは昭和歌謡を愛する、芯のあるクリエイターだ。だからこそ、その怒りはもっともです。しかし、誤解があります。
 

青年: 誤解?
 

哲人: 私はAIに「すべてを作らせる」つもりなど毛頭ありません。むしろ逆です。「人間が人間であるための領分」を守るために、AIという猛獣を飼いならす。その実験をしようと言っているのです。
 

青年: 猛獣を飼いならす……?
 

哲人: そう。例えば、あなたはメロディと歌詞を作るのは得意ですね? 先ほども「一時間で書けた」と言っていました。
 

青年: ええ、まあ。頭の中に中森明菜さんのような世界観があれば、メロディは降りてきますから。でも、それを形にする「トラックメイク」や「アレンジ」が苦手なんです。DAW(作曲ソフト)の操作は複雑だし、イメージ通りの音にならない。
 

哲人: そこです。あなたの頭の中には、すでに素晴らしい「音楽」が鳴っている。しかし、技術的な障壁(ボトルネック)のせいで、それがスピーカーから流れてこない。これは「音楽の損失」だとは思いませんか?
 

青年: それは……悔しいですが、そうです。
 

哲人: ならば、そのボトルネックだけをAIに解消させればいい。あなたが握るべきは「メロディ」と「言葉」というハンドマイクです。バックバンドの手配や演奏は、Sunoという優秀な――しかし少々癖のある――アレンジャーに任せてしまえばいいのです。

 

第二夜: 欲まみれの人生を
 

青年: 言葉では何とでも言えます。じゃあ実際、どうやるんです? AIなんて、結局は機械的な冷たい音しか出さないでしょう?
 

哲人: 論より証拠です。やってみましょう。あなたの作った、あの中森明菜風のデモ音源を出してください。
 

青年: ……これです。「ぬるっとした」歌詞とメロディですが。 (再生:♪海の向こうの白い波の~)
 

哲人: 素晴らしい。コード進行は音楽理論的には破綻していますが(笑)、メロディには力がある。この「魂」の部分は、AIには作れません。あなたが作ったのです。 では、このボーカルデータだけを抽出して、Sunoに投げ込みます。プロンプト(指示)はどうしますか?
 

青年: うーん……やっぱり「中森明菜」さん風で。「十戒」みたいな、80年代の尖った感じで。
 

哲人: いいですね。「80s Japanese Synth Pop」「Dark」「Dangerous」「Minor Key」。呪文のようですが、これでAIに「文脈」を伝えるのです。さあ、生成(Create)ボタンを押してください。
 

青年: ……たった20秒で、もう出来たんですか?
 

哲人: 聴いてみましょう。
 

(再生音) ♪ エンドはあっさりばっさりと…… ♪ 欲まみれの人生を 今生きてる……
 

青年: ……!! こ、これは……!
 

哲人: どうですか?
 

青年: 悔しいけど、カッコいいです。ちゃんと「十戒」っぽい緊迫感がある。しかも、僕が適当に歌ったメロディが、プロの歌声で、バキバキのアレンジに乗って再生されている。
 

哲人: あなたは今、スピーカーから流れてくる曲を聴いて、「AIが作った曲だ」と感じましたか? それとも「自分の曲だ」と感じましたか?
 

青年: ……「僕の曲」です。だって、メロディも歌詞も、僕が考えたものですから。AIはそれを……何と言うか、「翻訳」してくれたような感覚です。
 

哲人: その通り。AIは「鏡」であり「拡張機能」に過ぎないのです。
 

第三夜: プロデュースという創造
 

青年: でも先生、これでは簡単すぎませんか? 苦労して楽器を練習した人の立場は?
 

哲人: 確かに「弾く技術」の価値は変わるかもしれません。しかし、これからの時代に問われるのは「選ぶ技術」です。 AIは、放っておけば平凡な曲も出すし、変なコード進行も出してくる。さっきのE7のコードのようにね。
 

青年: ああ、あの独特な響きのところですね。
 

哲人: そう。あれを「失敗」として捨てるか、「味」として採用するか。その「ジャッジ(審美眼)」こそが、人間のクリエイターに残された最後の、そして最大の聖域です。 大滝詠一さんが細川たかしさんをプロデュースするように、あなたがAIをプロデュースするのです。
 

青年: 僕が、AIのプロデューサーになる……。
 

哲人: そうです。これからのA1グランプリは、そういう戦いになります。「AIに作らせた」のではなく、「AIを使いこなして、自分の世界を表現した」人間が勝つ。 どうですか? 「欲まみれの人生」を、AIと共に歩む勇気は出ましたか?
 

青年: (少し笑って)欲まみれは嫌ですが……でも、自分のメロディがこうやって形になるのは、素直に興奮します。
 

哲人: その「興奮」こそが、創作の源泉です。道具が変わっても、人間が感動するメカニズムは変わらない。 さあ、行きましょう。新しい音楽の夜明けは、もう始まっていますよ。
 

(完)

欲まみれの人生を
成瀬英樹
成瀬英樹
12月2日 20:58

お疲れ様です!

 

まず最初にお礼を言わせてください。12月7日開催の『BINGO Party』に、メンバー&ゼミ生のみんな、たくさんのお申し込みありがとうございました! なんと、バッチリまさかの満員御礼となりました。いやあ、嬉しいじゃないですか。

 

昨日は12/7に向けて、「タイムマシンなんていらないズ」の選曲会議をZoomでやっていました。ジョージ担当の「キソエム」、ポール担当の「ミッチさん」、そしてジョン役の僕。「あれもやろう、これもやろう」なんて話していると、まるで中学の頃に戻ったみたい。やっぱり僕は、ビートルズの話をしている時が一番幸せみたいです。

 

イベント翌日の12月8日がジョン・レノンの命日ということもあり、今回は僕としては初めて、命日に向けてジョンを歌うことになりそうです。バンド形式も、途中からメンバーが増えていく「プラスティック・オノ・バンド」ならぬ「プラスティック・ナル・バンド」形式で。

 

全部で20曲くらいやりますよ。光さん、小石くんも時間があったら駆けつけてくれるそうで、みんなでジョンが叫ぶタイプの「スリーコードもの」をやるのがめっちゃ楽しみです。

 

完全に間違った認識なのはわかってますが、「ジョンのスリーコードシャウト甲子園」なんてあったら、50代の部くらいなら全国大会に出られるくらいの自信はあります。なんつって。でも、その辺で負けたと思った人、いないんですよね。あはは。エントリー曲は『Slow Down』でお願いします。ラリー・ウィリアムスのバージョンで「ブルルル」多めで行きます。忘れてなければ!


 

さて、話は変わって現在進行形の話題を。 昨日からSuno AIについての動画をせっせと作っておりました。AIの進化は凄まじいですね。動画内の説明ボードやサムネイル作成にも威力を発揮してくれて、これまで何時間もかかっていた作業が「一瞬」で終わります。しかもクオリティも雲泥の差。サムネイルって本当に難しいし、人に頼んでもなかなかイメージ通りにいかないものですが、プロンプト一発でプロ級に仕上がる。時間を見つけて、過去動画のサムネも全部変えようかと思うほどです。

 

Suno AIだってそう。こんなに一瞬で、ある程度のアレンジができてしまうなんて、まさに夢です。今こうしている間にも、若い人たちがこの新しいツールを遊び倒して、新しいカルチャーを産んでいくんでしょうね。最高じゃん。

 

でもさ、こちとら自分で音楽を作ってもう57年近く生きてるんで。何より、作詞・作曲・アレンジが死ぬほど好きでさ。一番好きな音楽は、当然ながら自分の作品なわけです。AIなんかにその一番大切なとこ、取られてたまるかよって思ってます。AIが来ようが何がどうなろうが、僕がメロディを作ればそれは「成瀬節」なんだって。

 

だけれども、目の前でアレンジが一瞬で出来上がる興奮は抑えきれないのも事実。自分がイメージする音をAIに鳴らさせることはいとも簡単だし、これを使わない手はない。

 

ただ恐ろしいことに、Sunoはメロディだって書けちゃう。ちょっとだけ試したことあるけど、怖くなったよ。ボタンを押してメロディや歌詞を生成するのは、僕は大いに抵抗がある。それは僕の曲じゃないし、何より楽しくない。そこにある「0→1(ゼロイチ)」を生み出す苦しみと喜びこそが一番楽しいんだから。そこは変わりません。

 

今、「A1グランプリ」という企画の概要を頭の中で練っています。これは、たくさんの応募が欲しいわけじゃない。ただただ、この場所が必要な人に届いてほしい。

 

たとえば、学生時代や若い頃に作った歌をSuno AIでセルフカバーしてみてほしいんです。そうすれば僕が言いたいことがわかるはず。あの頃、あなたがやろうとしていたサウンドが、スピーカーから流れてくる。信じられない思いになるはずだよ。

 

AIは、70年代フォークの人にとってのアコギ、80年代の人にとってのシンセサイザー、そして現代のDAWと同じ。それらの代わりになる、新しいツールなんです。今主流のDAWだって、僕らからしたらここ15年くらいで普及した「最近の潮流」に過ぎないしね。

 

僕は年齢的にも立場的にも、本来なら守りに入る頃なのかもしれない。でも、この生き馬の目を抜く世界に今も身を置いている以上、ノスタルジーには浸っていられないんだよね。そりゃ俺だって、ずっと部屋でアコギでJTとか弾いていたいさ。でもね、それじゃダメなんだよ、俺はね。

『The Beatles Lovers Only~タイムマシンなんていらないズがやって来る!BEEP! BEEP! BEEP!』
BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン 成瀬英樹ゼミ マンスリープラン 旧プロ養成コース
成瀬英樹
成瀬英樹
11月24日 16:34

お疲れ様です!!以下メールをすべてのメンバーに送らせていただきましたが、何名の方がアドレスが不備で帰ってきてしまってます。このメールが届いていない方は、アドレスが不備か何かなので、一度ご連絡いただけると幸いです! そして、以下、メールを共有しますので、メールが届いていない方はこちらをご覧になって、ご返信いただけたら幸いです!


限定20名です! ぜひお急ぎの上、ご連絡くださいね☺️



BINGOメンバーの皆さんへ


日頃よりBINGOへの熱いご支援をいただき、本当にありがとうございます! 皆様のおかげで、今年はBINGOにとって大きな飛躍の年となりました。
 

その感謝の気持ちを込めて、来る12月7日に、ささやかながらオフ会を企画しました。 ビートルズを愛する仲間たちと、今年一番の楽しい時間を共有したいと思います。
 

題して… 『The Beatles Lovers Only~タイムマシンなんていらないズがやって来る!BEEP! BEEP! BEEP!』
 

🎸 イベントの趣旨 今回の集まりは、いつものライブハウスでのステージとは一味違います。 楽器やお飲み物が楽しめる落ち着いた空間で、メンバーの演奏(セッション)を間近で楽しみながら、皆さんとゆっくりご歓談いただく「アットホームなパーティー」です。
 

曲の合間には、ぜひメンバーとビートルズ談義に花を咲かせましょう!
 

【出演メンバー】 ▼前半(初期曲中心) 成瀬(ジョン役)、キソエムさん(ジョージ役)、北道さん(ポール役) そしてドラムはなんと、The Shakesの伴慶充さんが叩いてくださいます!
 

▼後半........

この続きを読むには BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン 成瀬英樹ゼミ マンスリープラン 旧プロ養成コース への登録が必要です。

僕が十五歳なら、AI音楽生成アプリを手当たり次第にダウンロードしている
成瀬英樹
成瀬英樹
11月24日 10:18

今日は特別な音源を公開した。僕のバンドFOUR TRIPSの、2000年の未発表曲『神戸珈琲物語』のAIを使用したカヴァーだ。ボーカルは、当時のデモテープに残っていた「aiちゃん」の声をAIで抽出し、丁寧にエディットして仕上げたものだ。 いわば、ビートルズが新曲『Now and Then』でジョン・レノンの声を蘇らせたのとまったく同じ手法である。

 

AIだからといって、ボタンひとつで音楽が出来上がるわけではない。
 

確かに、押せば「それっぽい何か」はすぐ出てくる。だから最初はみんな喜ぶ。そして、驚くほどすぐに飽きる。なぜなら、それだけでは「作品」にはならないからだ。
 

それでも僕は今、AIという技術に全振りしようと思っている。

テクノロジーの発展は、決して逆行しない。 今はまだ発展途上だ。だから少し触って「なんだ、使えねえや」と投げ出す人も多いだろう。それはそれでいい。あなたがやめてくれれば、ライバルがひとり減るだけの話で、こちらとしては正直ありがたい。
 

僕は今、AIにしかできないことを見極めるための、大がかりな実験期間にいる。 振り返れば、僕たちはいつだって実験しながら前に進んできたのだ。
 

僕は13歳からギターを弾き、独学でプロになった。その歴史は、目の前に現れる「新しい技術」との格闘の歴史でもある。


中学生の頃、高価な録音機材なんて買えなかった。 だから、二台のカセットデッキを並べて悪戦苦闘した。一台で録った音を再生しながら、もう一台で別の音を重ねて録音する。いわゆる「ダビング」だ。重ねるたびに音は遠くなり、ぼやけ、劣化していく。 それでも、複数の音が重なり合ったそのカセットテープは、市販のヒット曲よりもずっと愛おしかった。

 

高校生になり、タスカムのカセット式MTR「ポータワン」を手に入れた時の衝撃は忘れられない。アルバイト代を握りしめて買ったその魔法の箱は、トラックをまとめて空きを作る「ピンポン録音」ができた。 ただし、一度ピンポンしたら、音のバランスはもう二度と戻せない。不可逆の作業だ。 60年代、ビートルズがあの傑作群を4トラックで録っていたことを思えば、当時の僕らがその工程を避けて通れるはずもなかった。

 

だから僕は、昨今の「カセットテープ復権」の話を聞くたびに、つい言ってしまう。 「冗談じゃない」と。

 

あの劣化と闘い続けた世代が、心からカセットに戻りたいと思うことなんてない。アナログレコードの温かみとは事情が違うのだ。あのノイズと不便さは、僕らにとって戦場だった。

 

90年代後半、RolandのハードディスクMTRが登場し、僕らはようやく音質劣化の呪縛から解き放たれた。 デビューが決まり、潮目が変わり、契約が切れる予感が漂う中でも、僕らはその機材にしがみついて曲を作り続けた。Zipディスクにデータを落とし、ドラムのデータをやり取りする。今で言うファイル共有の走りだ。

 

そして2000年代、PCでのレコーディングが当たり前になった。 波形を目で見て、切って、貼る。パンチイン録音の、あの胃が痛くなるような緊張感は消えた。トラック数は無限になり、ピッチ補正で歌さえ直せるようになった。

 

そしてついに今、AIが登場した。

 

音楽を作るという営みは、いつの時代も「与えられた道具をどう使うか」という自分との対話だった。 カセットデッキでも、PCでも、AIでも、その本質は変わらない。道具が便利になったからといって、作る苦しみや喜びが消えるわけではないのだ。

 

だから僕は、AIを前にして戸惑いながらも、やはり向き合っていく。 それが、ソングライターという生き物の性分だからだ。

 

先日、あるインタビュー記事を読んで膝を打った。 敬愛する佐野元春さんが、こう発言していたのだ。

「僕が十五歳なら、AI音楽生成アプリを手当たり次第にダウンロードしている」と。
 

憧れの人と意見が一致したのは、震えるほど嬉しかった。 実は僕も先日、作曲を始めたいという若い人に、こんなアドバイスをしたばかりだったのだ。


「ギターなんて練習しなくていいから、死ぬほど音楽を聴いて、AIで曲を作ったらいいよ」


僕たちがカセットデッキで遊んだように、今の君はAIで遊べばいい。 新しいおもちゃを手にした子供のように、僕たちはまた、音楽の新しい扉を開けようとしている。