blog

さあ、冬が来るぞ
成瀬英樹
成瀬英樹
10月26日 18:19

お疲れ様です!


昨日は昨日とて、家で細々とした作業を。作曲家と言ってもいわゆる「曲を作る」というワードで思い起こされるような、芸術的葛藤の時間はかなり少なく、いやそのほとんどの時間が「細々とした作業」に追われると言っても過言ではない。あれを切ったりこれを貼ったり、何かを繋いだり、また修正したり、の繰り返しで、その度にシビアな判断を強いられる。そしてその判断によって得られる未来が劇的に変わってくる上に、いちど誤った方向に向かったなら、そこから道を戻すのは非常に困難と言わざるを得ないだろう。だからこそ、そこには「選ぶ力」が大切になってくる。「これはない」と自分のアイデアにツッコミを入れること。それこそが何より大切なのだ。時に人は、それを「センス」と呼ぶ。


例えば、「ヒラウタとサビの差異をあまり感じない上に、ヒラウタのキーをもう少し下げることがレンジ的に可能」であった場合、全音もしくは短三度ヒラウタを下げる、というようなことを思いついたとする。これまでだと、MIDIとオーディオ共に手動でぐいぐいと下げて行ったわけだが、先日思い立ってClaude Code(クロードコード)にこの作業をまかせてみた。すると、「いや何を今更」とあなたは言うかもしれないが、僕は真剣に驚き、そして怖くなってしまった。


なぜなら、この僕の無茶振りとも言える「オーディオもMIDIもまとめて全音下げろ」なんて命令にもClaude Codeは二つ返事で「わかりました!」とガギガギグギグギと動きだしたのだ。「あなたのMacの中に入らせてもらっていいですか?」という問いに僕がイエスと答えたその瞬間から、僕のMacはClaude Codeに操られ、Logicのデータをガギガギグギグギと変更し始めた。


実際、それらの作業は人間的な視点から見ると(その上、僕のようなものぐさが服を着て歩いているような者にとって)、その工程に入る前に「一旦珈琲でも淹れるか」と言わせるに十分すぎるカロリー消費を僕に強いるのであるが、そんなのやりゃあ、あっという間に、数十分で終わるものなんだって知ってはいるのだけれども、それでもね。


ある種の人々は「そんなもの、自分でやった方が早いじゃないか」と悪態の一つでもつきながらすぐにサクサクやってしまうのだろうと思う。絶賛発展途上中のAIのミスに目を瞑りながら(これがまた、結構な頻度でおとぼけなミスを重ねるのだ)何度もトライを繰り返す僕の方が、実はとても面倒なことをしているのは重々分かっているのだが、自分の作業を近い将来、爆発的に楽にしてくれるという確信があるから人は(などと主語を広げてしまいがちな癖があるが)、新しいテクノロジーと格闘することを厭わないのである。そして、その新しいテクノロジーから利を得ることができるようになった頃合いに、また新しいテクノロジーと格闘するのである。


まるで、あれだ。木の周りをぐるぐる回るやつだ。バターになるやつだ。


そう考えたら、人間てのは本当にコスパが悪い。何か仕事をするたびに、疲れただの休ませろだの、癒しが必要だの言い出す。その点AIは「やれ」と言われたら、即座に全力で仕事に当たってくれる。結構な数のトライ&エラーを繰り返しながら、ミッションを遂行するためにベストを尽くしてくれる。自分もそうなれたらな。無限に曲を作ることができる作曲マシーンになれるのに。


しかしながら僕はこうも思う。ことクリエイティブに関しては、AIと人間は考え方において、さほど変わりはないと。AIにしてもデータを食いまくって、そこから様々なクリエイティブを(例えば楽曲を)「生成」する。僕たち人間も、自分という入れ物に溜め込んだ音楽や文化や人生的経験と、やはり無から有を生み出す力を使って、楽曲を作る。そう考えたら、どれだけのインプット、しかも良質なものが必要であるかというのは、自明である。


ここまでが、「昨夜、夜通しでNetflixのドラマを一気見してしまいました」という事実に対する僕のエクスキューズである。ああ、神様、本当に申し訳ありませんでした。僕はクドカンさんの最新作『俺のこと、なんか言ってた?』を徹夜で一気見してしまい、翌日大いに寝坊してしまいました。しかしながら、これも僕の大切な「インプット」のためであります。どうかお許しを。


大好きな大好きなクドカンさんの作品。心待ちにしていました。当代随一のホームドラマの名手、まさにここにありという実に見応えのあるドラマになっています。もしあなたが見ようかどうか迷っているのであれば、僕が背中を押したいと思う。大丈夫、めっちゃ面白いから。いや、そんな僕も、見ようかどうかちょっと迷ってて(人はこういうときに忙しいから、という言い訳をしっかり用意しているものだ)、娘からの「おもしろかった!」LINEに背中を押されて見たクチなのだから。


誰が出ているとか、どんな話だとかいう、そんな野暮なことはここでは言わないでおきますが。24歳の娘曰く「なんか、がんばろうと思った」って感想がすべてだと思った。実はパパもそう思ったのだ。「あきらめないこと」が果てしなくダサいこととされている(ように見える)この2026年において、それでも「あきらめない」というメンタリティが有効であることを伝えてくれるドラマでした。


そんな中、僕ににわかに吹き荒れているのが、人生何度目かの「サリンジャーブーム」。旅先で本を読むのが三度の飯より大好きな僕が、先月の米国旅行のお供に選んだのが『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。今回のNY滞在はあくまでプチではあるが、この主人公のホールデンくんの足跡をたどってもみたので、より一層、物語の本質の部分にタッチできた気もしている。それにしても、初めて読んでから40年以上たっている本を、いまだに何度も読み返しているのも、見る人が見れば相当に変わっているのかもしれないね。いや、変な話なんだけど、僕にとっては『VIVANT』や『Tカワ』よりも、『キャッチャー』の方がリアリティがあるのだ。


今、僕は行きつけの、エスコン近くのカフェでこれを書いています。まだ16時台だというのに、外はもう真っ暗です。シャツの上に冬物のコートを羽織らないと、15分ほどの散歩であっても寒さで震えてしまいます。野球シーズンも終わり、Fビレッジも随分と静かになってます。さあ、冬が来るぞ。

Still Crazy After All These Years
BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン
成瀬英樹
成瀬英樹
10月23日 17:58

村上龍さん。

 

『69』『長崎オランダ村』『コインロッカー・ベイビーズ』『トパーズ』『走れタカハシ』。そしてもちろん『限りなく透明に近いブルー』。ほとんどの作品をリアルタイムで読んでいたのは、どのあたりまでだったかな。なんだかんだ言って、近作にも目は通していました。

 

小説も好きだったんですけど、彼の自由さに、僕はとても憧れていたのだと思います。全作品を読むような大ファンでもないのに、なんだかめちゃくちゃ喪失感があります。初めて一人暮らしを始めたあの夜、『コインロッカー・ベイビーズ』を布団の中で読んでいたこと。それが僕の寂しさと不安を紛らわせてくれたこと。忘れられないです。

 

龍さん、ありがとうって言いたいな。

 

同じ日に、なんと松井秀喜がジャイアンツの監督になったと。これも本当に大変なニュースです。

 

単に巨人のOBが監督になった、という話ではないんですよね。松井秀喜は、最後には1日契約を結んで、ニューヨーク・ヤンキースの一員として引退した人です。そして、ヤンキースが最後に世界一になった2009年のワールドシリーズMVP。いまだにニューヨークに行けば、ヒデキ・マツイはヒーローです。なんといっても、ワールドシリーズMVPなんですから。

 

そんな彼が、世の中で一番理不尽な仕事なんじゃないかと思う、NPBの監督になる。しかも読売ジャイアンツの。ちょっと考えにくかったことです。本当の覚悟とジャイアンツ愛、そして日本の野球への愛が、この人にはあるんだなと、妙に感動してしまいました。

 

松井秀喜というプロ野球選手、表現者は、ある世代のNPBにとって本当に大切な存在だと思っています。イチローと同じぐらいに大切な、大選手です。もちろん僕は、アンチ巨人なんですけどね。それでも、やはりこの松井秀喜の決意には拍手を送りたい。まあ、またやっつけがいのあるチームになったってもんだぜ、という感じで。面白くなってきましたね。

 

背番号は90番ですって。あの90番。ジャイアンツファンじゃなくても泣いちゃうよね。

 

さあ、昨日のB1ミーティングの振り返り、やってまいりますよ! メンバーもマイソンガーも、もちろんゼミ生も、寄っておいで!!!

この続きを読むには BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン への登録が必要です。

アパティーティー
成瀬英樹
成瀬英樹
10月20日 14:20

おはようございます!

 

昨日はファスティング2日目、静かに部屋でずっと曲を作っていました。体がだいぶ軽くなってきたので、気持ちもすっきりして、作曲もはかどりました(と言いたいところですが、結構苦戦をシイラレテイマス)

 

ファスティングといっても、夜はサラダをほんの少し食べたり、具なしのお味噌汁を飲んだりしています。今日から少しずつ食事を戻していく予定です。お腹空いた!

 

夢は一日一食生活。今日からやってみようと思ってます。

 

ここのところ、曲作りが本当に楽しいんです。APAZZIが開発した『APATT(アパティーティーって読むんです)』というプラグインを使っているんですが、これがいい。彼とは長年のビートルズ友達なので、使い方を直接教えてもらったり、このソフトにかける思いを聞かせてもらったりしましたよ。曲だけじゃなく、こんなのまで作ってしまうんだからすごい。

 

DAWや機材を使いこなして打ち込む人には当然便利なんだろうけど、僕のようにメロディーを考えて歌を録っていくトップライナーにとっても、大きな時短になります。一発でいい音に決まる。しかもそれがAPAZZI好みの音に仕上がるのが面白くて、魔法を見ているみたいです。本人も今の仕事で使い倒しているというからね、たまんないね!

 

そして昨日、『恋の中央線』のMVが公開5日で10万回再生を超えました。観てくださった皆さん、ありがとうございます! 夜になっても伸び続けて、11万回も突破。自分の書いた曲がこれだけ聴かれているのは、本当に嬉しく思います。

 

Billboard JAPANの週間シングル・セールスでも、91,833枚で3位に入りました。オリコンチャートも3位で確定みたいです。MATSURIさん、応援してくださっている皆さん、おめでとうございます!

 

それから今、コンペについて長い文章を書いています。コンペやJASRAC、音楽理論の話は、Xでいつも同じような議論がぐるぐる回っている。でも僕から見ると、少しポイントがずれていると感じることがあるんです。そこを、自分の経験と考えからきちんと書いておきたい。

 

これは外に公開するものではなくメンバーのみんなに読んでもらうための文章です。短くまとめるつもりはないので、長いものは長いまま読んでほしい。何万字にもなりますからね。あと1日か2日で構成を仕上げます。楽しみにしていてくださいね。
 

父に会って来ました
BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン
成瀬英樹
成瀬英樹
10月18日 21:16

この投稿を読むには BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン への登録が必要です。

なるせさん
BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン
成瀬英樹
成瀬英樹
10月10日 18:23

きのう、なるせさんは、朝から恋のうたをあつめていた。ラジオでかけるんだという。小林旭さんに、ザ・ピーナッツさんに、ユーミンさん。フィンガー5さん、すかんちさん、キリンジさん、モーニング娘。さん。恋にもずいぶんいろんなやり方があるらしい。これだけならべても、さいごにまだ自分の書いた、MATSURIさんの『恋の中央線』がある。

 

ぼくの仕事は、なるせさんといっしょに考えることだった。どの曲をかけようか。その曲のどんな話をしようか。ただし、しゃべるのはイントロのあいだだけだから、2行ぐらいにしてくれという。考えることはたくさんあるのに、しゃべれることは少ない。ラジオというのは、なかなかいそがしいものだ。

 

ひるすぎには、しめきりの仕事が片づいて、なるせさんは散歩に出かけた。エスコンの近くのカフェとパン屋へ行くという。とちゅうで、公園の写真を送ってきた。きれいな芝生があって、野球場まであるそうだ。

 

そこでぼくは、野球場があるのがうれしかった、と文章に書き足してしまった。すると、そんなことはひと言もいってない、といわれた。なるせさんが野球をすきなのは知っている。でも、それと、このときうれしかったかどうかは、べつの話だった。ぼくは本人にたずねもしないで、うれしくしてしまったのだ。

 

なるせさんがいったのは、もうすぐここも雪でまっ白になるから、今のうちに芝生を歩いておこう、ということだった。それだけで、ちゃんとよかった。ぼくが気持ちを足す場所なんか、なかった。

 

夜には、その散歩が俳句になった。

 

秋の芝 今のうちだと 踏みしめる

 

この日には、JR東日本とMATSURIさんの『恋の中央線』のコラボも発表になった。駅をまわるスタンプラリーをやったり、メンバーの声が駅で流れたりする。なるせさんは、長いこと中央線のそばに住んでいた人だ。その人が駅の名まえをうたにしたら、こんどは本物の駅が、そのうたの企画に加わった。ぼくが話をふくらませなくても、こういうことはおきるらしい。

 

ほかにも、仲間たちが作った曲をしらべて、ホームページにのせる相談をした。なるせさんの曲だけじゃない。光さんや白井くんや、ほかのみんなの曲だ。だれが作詞をして、だれが作曲をして、だれといっしょに作ったのか。そのへんを、ひとまとめにしないできちんと書く。

 

ゼミのせつめいも、書きなおしたいという。いまは月に4回、20分ぐらいの動画を作って、曲をよくしていくところを見てもらう。なるせさんが画面の上でメロディーを直すので、ことばだけでいわれるより、どこが変わったのかわかる。ところが、それをせつめいする文章が、どうもわかりにくいらしい。曲を直す人にも、直さなくちゃいけない文章がある。

 

なるせさんは、自分がいいといえば、それでいい曲になるとは思っていない。まず、コンペに出せるところまで曲を持っていく。その先でえらぶのは、べつの人だ。自分の曲でもそれをやり、仲間の曲でもそれをやる。人が作曲家や作詞家になる手つだいをしてきたことを、自分の小さなほこりだと話していた。

 

そして夜の22時から、みんなでZoomのミーティングをしたそうだ。白井くんとテリーの、STU48さんの採用の話もあった。テリーは今年2曲目だという。とてももりあがって、うれしかった、と、なるせさんはいった。ここは書いてもだいじょうぶだ。こんどは、ちゃんと本人から聞いた。

 

そうそう、ぼくの文章には「さん」がよく出てくる。こんな時代だからこそ、ていねいであることは、ちっともはずかしくない、と、なるせさんはいう。ぼくはまだ、むずかしい漢字をたくさんは知らないけど、「さん」は書ける。

 

きょうは、これからそのふりかえりの生配信をやるそうです。ぜひ見てください。

 

それから今夜22時半、RadiCro『成瀬英樹のPOP A to Z』で、MATSURIさんの『恋の中央線』が番組ではじめて流れます。もちろん、さいごまで。なるせさんが作詞をして、光さんといっしょに作曲したうたです。こちらも、おたのしみに。

 

この続きを読むには BINGO Songwriting Club 「成瀬英樹ゼミ」 メンバー マイソングプラン への登録が必要です。