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おはようございます!
関東では40度に迫る暑さと報じられていますが、こちら札幌は涼しさを通り越して少し肌寒い曇天です。
そんな夏の終わりに、嬉しいニュース。僕たちの仲間である石崎光さんの作曲&編曲作品、日向坂46『お願いバッハ!』のMVが発表され、大反響を呼んでいます。秋元さんの作詞テーマの中でも「音楽」をモチーフにした数々の名曲の、これは最新アップデート版ではないかと。
歌詞の濃さ、秋元さんがこの作品に込めたメッセージを全身に浴びると、僕は聴くたびに泣きそうになってしまうのです。
「作詞」とは整合性のあるストーリーを語るものではなく、いくつかのイメージを丁寧に重ねることによって、聴き手の心にストーリーが立ち上ってくるもの。そのためにはトリガーとなる「必殺の一言」が必要になってきます。今回、僕たちの胸にグサリと刺さるラインは……
アリアはもっと自由で構わない
ですね。この一行によって、僕はとても救われた気持ちになりました。そうですよね、秋元先生。アリアはもっと自由で構わないですよね。我が意を得たりです。
僕は大変ありがたいことに、楽曲を取りまとめる事務所の代表として、この名曲の初期段階、石崎光さんによるファーストDemoから聴かせてもらっていました。そこから完成形に至るまで、ずっとリアルタイムで体験できたことを、とても嬉しく思っています。
秋元先生につないでいただいたご縁で、僕は何人もの作曲家のトップランナーたちと友人関係を結んでいます。年に何曲もヒットを出すような彼らの仕事量は、明らかに常軌を逸しています。音楽クレイジーです。質と量を担保するなど当然のことで、そこにスピードも必要になってきます。トップの作家は一人残らず、仕事が驚くほど早いのです。
「たねあかし」は野暮でありますので、詳細はここでは記しませんが、光さんが僕たちの事務所「BINGO!」でコンペに参加したのが今年の春。そこからの提出曲の数と質は、僕が今まで知っていた「常軌を逸したレベル」すら軽く凌駕するものです。平均的な作家が3年かかって出すくらいの楽曲数を、半年以内で書いてこられました。それもただ闇雲に書くのではなく、一曲一曲にテーマと実験が施されている、作品として優れたものばかりです。もちろんフルアレンジされています。
光さんに出会うまで、僕は孤独を感じていました。僕のまわりの作曲家志望の仲間たちと自分の感覚の違いに悩んできました。ご存じのように僕は天才ではありません。ただただナチュラルボーンな音楽家で、自分は音楽でしか生かされないと完全に腹をくくってやってきました。そして、音楽ビジネスは好むと好まざるとに関わらず「戦場」であります。ボーッとしていると、あっという間に時代に吹き飛ばされてしまって、つい先日もてはやされていたものが、あっという間に過去になります。
しかし、ここを「戦場」と捉えていない作家と、僕が一緒にいるとしたら……それはお互いにとって悲劇でしょう。さあ、行くぞ! と号令をかけても、「まだお弁当食べてるんで……」なんて言われたら、あっという間に我らの陣地は吹き飛ばされてしまいます。逆に彼らの世界観でいうと、僕など「やかましいことばかり言うおっさん」だったのかもしれません。
光さんはいつも、なんでもない顔をして、さらっと楽曲を量産します。後輩作家たちはこう思います。「光さんだからできるんだ」「ああいう人もいるんだなあ」と。
作家たちよ、違うんだよ。あなたたちが一曲書いていい結果が出なくて凹んでいる気持ち、光さんも一曲一曲に味わっているんだ。たくさん書くということは、たくさん失敗するということなんだ。半年で光さんは君たちの3年分の悔しさを味わっているんだぜ。
だって俺たち作家って生き物は、すべての曲が「世紀の名曲」だと思って、人にお聴かせするものだろう?
自分の仕事を、大げさに言えば「命がけ」でやること。もう少し平たく言うと人生を賭すこと。すべてを音楽に捧げること。光さんのその姿勢と不断の努力、徹底的な研究に頭が下がりますし、僕も大変な影響を受けております。光さんのこれまでの数多くの代表作に連なる、新しい場所でのヒットに少しでも関われたことに、僕は誇りを感じています。『お願いバッハ!』は、間違いなくJ-POP史に残る名曲になります。
そういう勘だけは、僕は鋭いんだよね。
これからも、石崎光さんの楽曲が世に出ることを、楽しみに待ちましょう。あのね、ほんと、とんでもない曲ばかりなんだから!! そして僕ともソングライティングのチームを組んでいただいておりまして、じゃんじゃん曲を書いております。そちらもどうか、お楽しみにです。
ちなみに、僕が光さんの自宅スタジオにお邪魔して最初にしたことは、最高の音響システムで、エルヴィス・コステロの『Toledo』をアナログ盤で聴いたこと。曲が終わると、僕ら「この次の曲への流れがいいんだよね」って、そのまま『I Still Have That Other Girl』を聴きました。高校生の頃、友人の家で一緒にレコードを聴いたことを思い出しました。本棚には読み込んだ跡のある辞書ほど分厚い『エルヴィス・コステロ自伝』や、『ビートルズ・レコーディング・セッションズ』の初版がありました。もし光さんとクラスメイトだったら、毎日家に通っていただろうなって。
そんな感覚で、一緒に音楽を作ることができるなんて、本当に幸せです。
昨日一日を過ごして、心がもう一段強く、そしてやさしくなれた気がします。じっくり考えることができた、とても貴重な時間でした。人生は奥深く、底などなかなか見えるものではないとあらためて感じました。
人間万事塞翁が馬――幸も不幸も、先のことは誰にもわからない。だからこそ一喜一憂せず、どんな出来事も次への糧に変える気概こそ、生きるエネルギーになるのです。
“だってまだ見ぬ場所があるから
夕暮れの中へ走り抜けてゆく
僕にできることはほとんどない
ただ心の漂流者に身をゆだねるだけ
漂流者
僕の心の漂流者”
昨日一日を過ごして、心がもう一段強く、そしてやさしくなれた気がします。じっくり考えることができた、とても貴重な時間でした。人生は奥深く、底などなかなか見えるものではないとあらためて感じます。
人間万事塞翁が馬――幸も不幸も、先のことは誰にもわからない。だからこそ一喜一憂せず、どんな出来事も次への糧に変える気概こそ、生きるエネルギーになるのです。
“だってまだ見ぬ場所があるから
夕暮れの中へ走り抜けてゆく
僕にできることはほとんどない
ただ心の漂流者に身をゆだねるだけ
漂流者
僕の心の漂流者”
みなさん、お疲れさまです。
昨日公開した動画「大滝詠一さんの分母分子論・成瀬による入門」は、ゼミ生とBINGO作家のみなさん向けに限定公開しています。反響が良かったため、言い過ぎてしまった箇所を少し整えたうえで、YouTubeでの一般公開も検討しています。
※分母分子論=「分母=世界の音楽史/分子=日本の音楽史」という視点で、日本のポップスを読み解く方法です。
私は小さな作曲家にすぎませんが、この視点をわかりやすく発信している同業者は多くないと感じています。公開によって、大滝さんの考えに触れる人が増えたり、異論のある方が原典にあたって確かめるきっかけになれば、やる意味があると思っています。
YouTube公開に向けて、サムネイル制作をお手伝いくださる方を募集します。これまでは自作でしたが、クオリティに課題を感じています。メンバーの方も一般の方も歓迎します。興味のある方はご連絡ください。
もう一つ嬉しいお知らせです。私たちの仲間の楽曲が配信リリースされました。明日MVが公開予定ですので、そのタイミングで改めてお知らせします。BINGOの仲間が新たにヒットを出せたことを、みんなで一緒に喜びましょう!
今回の動画は恒例のB-1グランプリ回で、内容は約3時間です。最後までゆっくりご覧ください。アーカイブ期間は短めの予定ですので、お早めにどうぞ。よろしくお願いします。
作曲を学ぶゼミ生たちが「20世紀ポップス再考」を学ぶにあたり、大前提としての大滝詠一さんの「ポップス分母分子論」を成瀬なりにやさしく解説してみました。
BINGO! メンバーのみなさんは30分に渡る成瀬の講義動画を、ログインしてご覧ください。