blog
さあ! 今日も朝生配信、ハリキッテまいります! チャリティアルバム『BINGO! AID』もいよいよ佳境! 今朝はあの10周年を迎えた西東京を代表するガールズグループへの賛歌を作っていきます! ナイスリクエストありがとう!
久しぶりに何にもない「ゼロ」からの新曲制作過程! どうぞ楽しんでくださいね!
追記!
配信中、途中までできた歌詞、メモっときます!
Oh! クワイア
はるかぜ のぞみ ほのかに
燃えかけの純情
Oh! クワイア 〇〇〇出会いね
境川のキンモクセイ
学校帰りか
子どもたち おでかけ日和
恋する街は 夢見る街だ
市バスはどこゆき? 銀河ゆき
恋する町田 夢見る町田
〇〇〇〇支える手 ずっと離さない
みなさんおはようございます。怒涛の週末、締切攻撃の嵐を乗り越えて、昨日はみんなでZoomミーティングを行いました。
最近、新しくBINGO!に加わってくださった方も多くて、初めて顔を合わせる方も何人もいて、賑やかになってきました。他の作曲講座や音楽スクールと違って、僕たちBINGO! は、一曲一曲を実践の場で徹底的に磨いていきます。学んでからじゃなく、いきなり実戦に出て、打席に立つ。それが一番速いと僕は思っています。
昨日もたくさんの新曲が集まりました。みんな一所懸命作ってきてくれて、画面越しに思わずにやけてしまう瞬間が何度もありました。さあ、今回のBINGO!大賞は誰が獲ったのか?もちろん、僕も新曲を出しましたよ。
そして今日は、もうひとつスペシャルなコンテンツをお届けします。今日のレッスンの模様を、メンバー限定公開しようと思います。
新しい方が増えてきたこともあって、メロディーを書いたときに、ボーカルのレンジ(音域)をあまり意識せずに広げすぎてしまっているケースがちょっと目立っています。だけど、実はボーカルのレンジって、楽曲制作においてものすごく大事なポイントです。今回のレッスンでは、その音域をどうやって無理なく狭めるか、具体的なコツをじっくりとレクチャーしました。
例えば、普段自分が書きがちな一番高い音、そして一番低い音。それをちゃんと意識して狭めていくと、歌いやすさも、キャッチーさも、一気に変わります。レッスン動画では、実際にあるゼミ生の楽曲を例にとって細かく解説しています。
ぜひ、「B1グランプリ動画」と合わせて、こちらもご覧いただけたらうれしいです!
それでは今日も頑張っていきましょう! 成瀬も一つずつ、がんばってます。BINGO! AIDも進めてるよー!
春の日曜日。息子たち二人の手を握りながらエスコンフィールドへ向かう道は、ゆっくり温まっていく空気の匂いで満ちていた。淡い陽射しが肩にふわりとのり、頬のあたりで春が深呼吸をしている。まだ午前中なのに、スタジアムの外周にはスカイブルーのユニフォームが柔らかな波のように揺れ、遠くで売り子の声がかすかに弾んでいた。子どもたちは胸の奥で鳴る鼓動を追いかけるように応援バットを打ち鳴らし、小さな靴音を跳ねさせて先を急ぐ。私は「転ばないでね」と声をかけながら、同じリズムを刻む自分の鼓動を聞いていた。
QRコードを読み取る小さな電子音と同時に、スタンドの向こうに芝生と赤土のコントラストがひらけた。眩しさに目を細めると、緑の息づかいが肺の奥まで届くようで、ふっと心が軽くなる。子どもたちは「わあ、海みたい」と声を上げ、私は「ほんとね」と笑った。海という言葉を口にした瞬間、はるか昔の夏休みが潮の匂いと一緒に胸の奥からこぼれた。
外野ライトスタンド一階席。フェンス越しに見えるフィールドは、地図のない旅への入り口みたいだ。隣の席には黒縁眼鏡の男性がひとり、膝の上のiPadに静かにペンを走らせている。私は軽く会釈して「今日はよろしくお願いします」と声をかける。男性は驚いたように目を上げ、すぐに穏やかな笑みを返してくれた。「こちらこそ。お子さんたちも楽しみですね」――その言葉は春風みたいにやわらかく、私の緊張をひとひら溶かしてくれた。
選手紹介が始まるとスタンドの空気がふわりと膨らむ。名前が呼ばれるたび、小さな手のひらがパチンと弾け、歓声が波紋のように広がった。長男のお気に入り、万波中正の名前が響くと、彼は目を輝かせて立ち上がる。次男も叫ぶ。「まんなみ、がんばれー!」その声は空を泳ぐ風船のように軽く、遠くまで飛んでいった。
プレイボール。ファイターズ先発の金村くんは立ち上がりに苦しみ、マリーンズに先制点を許した。ファイターズはすぐに追いつき、一時は同点に持ち込んだものの、中盤に再びリードを広げられてしまった。劣勢の試合だったけど、子供たちはグラウンドの攻防に夢中だった。
ふと隣の男性の手元に目をやると、iPad にサラサラと打球の行方を特別な数字やマークで記している。「いつもそうやってスコアをつけているんですか?」と尋ねると、男性はペン先を止めて微笑んだ。「スコアをつけないと、野球を見た気にならないんです」――その瞬間、私の中で昔の夏がパッと弾けた。あの頃、父もテレビで野球を観ながら、紙の上で鉛筆を動かしていた。飲みかけのビールの匂い、背中に感じていた扇風機の風、遠くの雷鳴。すべてが甘やかな記憶の水面に浮かび上がった。
五回裏、ファイターズにチャンスが訪れた。二死一、二塁で打席に立ったのはレイエス選手。アナウンスが「レイエス!」と告げられると、スタンドから期待を込めた拍手が湧いた。私たち親子も身を乗り出し、子どもたちは「レイエス、昨日を思い出して!」と声を張り上げる。前日の試合で彼は勝ち越し弾を放っていたのだ。ピッチャーがセットに入り、球場は一瞬静まり返る。だが渾身のスイングは空を切り、レイエスは三振に倒れた。ため息が漏れる。それでも子どもたちは「ナイスファイト!」と手を叩いた。
七回表が終わる頃、スタンドには心地よいざわめきが広がっていた。どこからか、キャラメルポップコーンの甘い香りが漂ってきて、エスコン・フィールドのガラスの外壁から取り込まれた春の夕暮れの光と混ざり合って、この球場独特の空気に包まれていた。子供たちは飲み物を片手に、芝生の向こうに広がる勝利への期待を夢見てはしゃいでいた。
けれど反撃はあと一歩届かず、試合は静かに終わった。スタンドに残るのは拍手と、最後まで諦めなかった鼓動の余韻だけ。私は目頭が熱くなり、小さな手を強く握りしめた。隣の男性が軽く拍手し、うなずく。「惜しかったですね。でも、いい試合でした」その声は夕暮れに溶けるリコーダーの音色のようにやさしかった。
観客が立ち上がり、通路へ流れていく。私は荷物をまとめつつ「子どもたちにも忘れられない日になりました」と伝える。長男は深く頭を下げ、「ありがとうございました!」と声を張った。男性は「また球場で会いましょう」と微笑む。その笑顔に父の面影を重ね、胸がじんわり滲んだ。
エスコン・フィールドを出ると、茜色が空の端から滲み始めていた。万波を真似して小さなバットを振る息子たち。手に残るあたたかな重み。顔を上げると、透明な空が静かに夜の色へ滑っていく。歓声、白いボールの軌跡、子どもたちの笑顔――それらは胸の内側でゆっくり発光を続けている。私はその光をそっと抱きしめながら、いつかまたここに帰ってくるだろう未来の自分に向かって、小さく手を振った。
「今日は、小島は責められないですよね?」
試合が終わったあと、僕はいつものように新札幌行きのバス停に並んでいた。満員のデイゲーム。ヒーローインタビューが盛り上がっている隙に、うまく列に滑り込めたので、思ったよりも待たずに乗れそうだった。そうだな、20分くらいでバスに乗れるだろう。そんなふうに考えていたときだった。
「今日は、小島は責められないですよね?」
そう話しかけてきたのは、マリーンズの帽子とユニフォームを身にまとった、二十代半ばくらいの青年だった。リュックを背負ったその青年は、僕の顔を一瞬じっと見たあと、慎重に声をかけてきた。きっと、話しかけてもいい人なのかどうか、考えたんだろう。
僕も、バスを待つあいだ少し退屈していたので、うなずいて話に応じた。
「いや、小島は本当に素晴らしかったですよ」
「そうですよね。小島は責められない」
それにしても──彼は続けた──
「今日の試合は、なんといっても初回の岡のボーンヘッドですよ。なんであれ、飛び出しちゃったんですかね」
「僕も驚きました。万波のポジショニングが良かったって言えなくもないですけど、それでも、あそこは打球が落ちてからのスタートでも間に合いましたよね」
そう。結果的に、あの岡のミスが、今日のすべてだった。
そんな話をしていると、後ろに並んでいた六十代後半ぐらいのご夫婦の奥さんの方が、話に割って入ってきた。
「岡はいいのよ。ファイターズにもいたんだから。がんばってるじゃないの」
「もちろん岡はいい選手です。でも今日は……ボーンヘッドでしたね」
「そういうときもあるわよ。岡だって必死なのよ」
「そうですよね。去年もオールスターに出ましたしね」
僕がそう返すと、奥さんは嬉しそうにうなずいた。
「ファイターズにいた人は、みんな応援しちゃうわね」
ほんとうにそう思う。
「それにしてもロッテ、強いですよね」
「ほんとよ、ねえ」と奥さん。
たしかに、今日も七回に野村が同点ホームランを打つまでは、まったく勝てる気がしなかった。このまま負けるか──そんなふうに思っていた。
「七回に、小島が突然乱れちゃいましたよね」とマリーンズファンの彼が言った。
「少し球が浮いたのかな。野村にはストレートを、左翼へ──あれは対空時間の長い、まさに四番打者のホームランでしたね」
「本当に長かったよね」
マリーンズファンにとっては苦しい瞬間だったろう。でも、奥さんが後ろからすかさず言った。
「たまには勝たせてよ」
その後のレイエスの一発も、効いた。
「これでレイエス、目覚めちゃうかもね」
奥さんはイタズラっぽくそう言った。
「そうなったらいいですね」
レイエスは、決して不調というわけではなかった。なかなか結果に結びつかないだけだった。今日のこの一発が、復活のきっかけになればいい──僕はそんなふうに思っていた。
「ファイターズはブルペンも良かったですよね」と彼が続けた。
河野、田中正義。この二人は万全だ。
「強いチームですよね」
「いやいや、マリーンズも本当に強いですよ。僕は監督の吉井理人さんのファンだから、マリーンズの野球にはすごく興味があるんです」
そんなふうに話しているうちに、バスの順番が来た。彼が先頭、僕が二番目にバスに乗り込む。
彼は運転手に障害者手帳を見せ、そのまま一番前の席へ。僕も続いて通路を挟んだ席につくと、彼が隣に座ってきた。まだ、もう少し話したいのだろう。
「いやー、ここのところ、ブルペンが大事なところで打たれたり、投手交代のタイミングがズレたり……そんな試合が多かったので、今日もドキドキでしたよ」と僕は言った。
「たしかに、古林の浅村に打たれた一発、大きかったですよね」
彼は本当に野球が好きなんだな、と思った。マリーンズファンなのに、ファイターズのことにも詳しい。
「あのときの古林は責められない。初回の清宮のエラーから、全部始まりましたもんね」
──すごいな。僕は毎試合観ているから覚えているけれど、彼は違う。それでもこんなに細かいディテールまで知っているなんて。本当に、心から野球が好きなんだ。
「ロッテとは、また今年も楽しい戦いになりそうですね」
「僕も、明日行きます」
「僕も、行きますよ」
バスが新札幌駅に着き、彼は一番に立ち上がって降りた。僕は隣の老夫婦に先を譲り、そのあとに続いた。右側のガード下の方を見ると、彼はもう小さくなっていた。リュックを揺らしながら、早足で歩く後ろ姿が見えた。
エスコン・フィールドの高い屋根の下、球場内には清らかな光が満ちていた。まだ春浅き四月の北海道。その広がる蒼穹に誘われるように、私と妻はまたここへやってきた。札幌ドーム時代から変わらぬ思いでファイターズを応援してきたが、このエスコンも三年目を迎え、いつの間にか私たち老夫婦の暮らしに溶け込み、心の拠り所となっていた。
これまでは外野席のシーズンシートを購入していた。しかし今年は、もっと自由に、気ままに、さまざまな席から試合を眺めたいと思った。その日の気分で場所を選び、球場の異なる表情を味わうのも、また一つの贅沢ではないか。昨日は一階ライトスタンドの後方、通路際にある二つ並びの席に腰を下ろした。
前方のいつもの席に、黒縁メガネの男性が静かに腰掛けていた。先日、偶然隣り合ったことがきっかけで、以来自然と挨拶を交わすようになった方である。彼は膝にタブレットを置き、電子ペンで淡々とスターティング・メンバーを書き記していた。彼のおだやかな佇まいに、私たちは親しみ以上のものを覚えていた。
「なかなか、調子が上がりませんね」と声をかけると、彼はにこやかに微笑み、「今日は北山、期待しましょう」と穏やかに返してくれた。
北山亘基投手──昨年、彼は眩しいほどの成長を遂げた。小柄な体躯から繰り出される剛球には、誰もが驚かされた。ドラフト八位という下位指名の出自をものともせず、堂々と先発ローテーションに食い込んだその姿は、まるで『ドカベン』の里中智を思わせる"小さな巨人"そのものである。
エスコン・フィールドは、試合のない日も入場することができる。誰もいないスタンドを背に、ただひたすらに投げ込む北山の姿を、私と妻は幾度となく見かけた。乾いた音が、ひとつ、またひとつ、空に吸い込まれる。努力とは声高に誇示するものではなく、こうしてひたむきに積み重ねられるものなのだと、その背中は静かに語っていた。
試合は、劇的な幕開けを迎えた。初回ファイターズの攻撃。一番打者に起用された淺間が、初球を叩き、先頭打者ホームランを放った。スタンド中が歓喜に包まれ、私も思わず立ち上がった。黒縁メガネの彼もこちらを振り返り、うれしそうに微笑んだ。
だが、勝利への道は、決して平坦ではなかった。マリーンズの先発「ボス」は冷静に立ち直り、ファイターズ打線を次々と封じ込めていった。結局ファイターズの得点はこの一点だけだった。
北山も懸命に投げ抜いた。六回を終えて、許した得点はわずか一点。しかし同点で迎えた七回、その均衡はわずかなほころびから崩れた。
一死後、振り逃げで出塁を許し、さらに北山自身の二塁への悪送球が重なって、一、三塁の危機を招いた。そして、マリーンズはスクイズを成功させた。流れは静かに、しかし確実にマリーンズ側へ傾いていった。
結局、最後までファイターズ打線は、マリーンズの豊富なブルペン投手たちを前に沈黙を破れず、悔しさの残る敗戦となった。「まあ、こういう日もあるよね」と、私は妻と顔を見合わせ、小さな笑みを交わした。
球場をあとにしながら、再び黒縁メガネの男性とすれ違った。「北山、惜しかったですね」と彼は言った。「でも、ミスは誰にでもあります。また明日、応援しましょう」その声に、私たちも静かにうなずいた。
バス乗り場へ向かう道すがら、夜風は鋭く頬を刺した。吐く息は白く揺れ、足元の影さえ震えていた。春とは名ばかり、北国の夜はまだ冬の名残を色濃く宿していた。ポケットに手を押し込みながらふと見上げると、街路樹の梢に並んだ桜の蕾は、固く閉じたままだった。咲き誇るには、もう少し時間が必要なのだろう。試合の余韻と、まだ訪れぬ春の気配を胸に抱えながら、私たちは静かにバスを待った。