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『WONDER』
成瀬英樹
成瀬英樹
4月4日 13:47

昨日は、いくつものレッスンを行い、新しく作家を志す方との面談もありました。自分の作曲も少し進んで、ラジオの収録も無事に完了。とても充実した一日でした。
 

今週の「POP A to Z」は、予定を変更して追悼特集をお届けすることにしました。日本の音楽シーンを長年支えてきた偉大なソングライターチームのおひとりが、先日この世を去られたのです。その方が関わってこられた楽曲を、あらためてご紹介したいと思いました。僕自身にとっても、大きな影響を与えてくれたヒット曲たち。きっと、皆さんにも馴染みのある名曲がたくさん流れると思います。
 

夜、地元の友人からLINEが届きました。「今、お前らの曲がテレビで流れてるよ」と。なんのことだろう? と詳しく聞いてみると、僕たちFOUR TRIPSのデビュー曲『WONDER』が、TBS系のテレビ番組で流れていたとのこと。
 

『WONDER』は、1997年放送のドラマ『友達の恋人』の主題歌としてリリースされた楽曲です。決して大ヒットとはいえないけれど、まあ“ポテンヒット”として、それでもそれなりに多くの方に聴いていただきました。そんな曲が、今またテレビで流れる――素直にうれしい出来事です。
 

後からTVerで番組を確認してみたところ、TBSのドラマの歴史を振り返る特集のなかで『友達の恋人』が紹介されていました。番組の流れとしては、TBSのヒットドラマを紹介し、その時代の空気を振り返る、という趣旨だったようです。輝ける大ヒットドラマの中で、なぜさほどヒットしなかった(失礼w)『友達の恋人』が紹介されたのかというと…まあそのあたりは、ぜひTVerで観てご確認ください。
 

ただひとつ、少しだけ気になったのは、楽曲のクレジットについてでした。番組内では、サザンオールスターズ、B’z、山下達郎さんなどの主題歌には、きちんと曲名とアーティスト名が表示されていたのに、僕たちFOUR TRIPSの『WONDER』は紹介クレジットがありませんでした。

 

昨夜のうちは「まあ、そんなこともあるか」と思っていたのですが、朝になってふと考えると、やっぱり少し寂しさが残りました。曲を流していただけたことには、もちろん感謝しています。しかしながら、「FOUR TRIPS / WONDER」と名前が添えられていたらな、と。どういう基準でクレジットを入れるか入れないかを、編集担当者はどう判断したのだろうと考えてしまいます。

 

それでも──二十年以上、いや、もう三十年近く経っても、こうして曲が流れるというのは、やっぱりすごいことだと思います。一曲でも、“ヒット曲らしきもの”があるというのは、本当にありがたいこと。あのドラマやあの楽曲には、いろんな想いがあります。ほんのちょっとのいい思い出と、それをはるかに凌駕する切ない思い出と。28年たっても、こんな気持ちになるなんてさ、いかにもオレたちFOUR TRIPSらしいな、とも思いました。

 

だからこそ、あらためて思ったのです。自分がもし、クレジットを出す側の立場にあるなら、有名か無名かで扱いを変えるのではなく、できる限りフェアにやろう、と。

 

もちろん、こうして流していただいたことへの感謝は、心から持っています。誤解のないように。それだけははっきり言いたい。怒っているわけではありません。ただ、もしこの文章を読んでくださっているあなたが僕の立場だったとしたら――きっと、同じように感じると思うんです。そりゃそうだよね?

 

娘にもLINEで知らせたところ、とても喜んでくれて、わざわざTVerで番組を見てくれたようでした。ほんの少しでも、パパとママがあの頃がんばっていたことが、娘に伝わったなら、それはそれで良かったかな。

 

『WONDER』のあとは、僕らまったく鳴かず飛ばずで、結局神戸に帰っていろんな仕事をしながら、作曲家になるべく体制を立て直そうと必死でした。当時の僕の夢は「もう一曲、カラオケに入るような曲を作ること」でした。『WONDER』はカラオケに入っていたので、それに続くもう一曲を――というのが、あの頃の僕にとってはとてもとても高い目標だったのです。でもそんなことを口にしても、周囲の反応は冷ややかでした…

「おまえはまだそんな夢みたいなことを言っているのか」と。

 

あれから28年。今では、僕が作った曲をすべてカラオケで歌おうと思ったら――おそらく仲間たちと回して歌ったなら、2時間では足りないでしょう。本当にありがたいことです。音楽の神様に、そして、音楽を続けさせてくれる環境と周囲の人たちに、何より応援してくれるファンのみなさんに、心から感謝しています。

 

自分のデビュー曲が、またテレビで流れる。そんな出来事を通して、いろいろなことを思い出しました。――ソングライターって、ほんとうに、めんどくさい生き物ですね。