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昨日の試合、私は本当に楽しみにしていました。
何よりの理由は、先着1万人(だったかしら?)に清宮幸太郎くんのTシャツが配られるということだったの。あの子は、私の大好きな選手なのです。先日も万波くんや伊藤投手のTシャツが配られた日がありましたけれど、その日はどうしても仕事が終わらなくて、球場に着いた時にはもうすべて配布が終わっていたの。帰り道のさみしさといったらなかったわ。あの日の悔しさを晴らすために、昨日はなにがなんでも早く仕事を切り上げて、開場時間を目指してエスコンフィールドへと向かいました。
入り口で、念願のTシャツを手に取った瞬間、思わず胸が熱くなりました。ふふ、いいトシをして私、こんなことで喜んでしまうなんて――なんて思いながらも、清宮くんらしいポップな図案のTシャツをしっかりと抱えて、席へと向かいました。
私は今年から、ライト外野席のシーズンシートを買ったのです。去年、何度かひとりで試合を観に行くうちに、この球場で過ごす時間が、少しずつ特別なものになっていったんです。ひとりきりでも、こんなに心を動かされる場所があるんだなって。たとえば試合前、グラウンドでキャッチボールをする選手たちを静かに見守る時間――そんな風景が、いつしか私の心に深く刻まれていったのです。だから今年は思いきって、ちょっと奮発してみました。全部の試合に行けるわけじゃないけれど、行けない日はリセールもできるし、週に2、3回は通っています。ライトスタンドに決めたのは、左打ちの清宮くんのホームランがこの方向に飛んできたらなって……そんな夢を見たいから。
昨日も、私の前の席には、いつもの「見慣れた方」がいらっしゃいました。50代半ばくらいかしら。少し白髪まじりで、黒縁のメガネをかけ、ダンガリーシャツを着ている男性。彼はタブレットを小脇に抱えて席につくと、試合開始と同時に静かに画面をタップしながらスコアをつけ始めるのです。私はひそかに「タブレットスコアおじさん」と呼んでいます。無口だけれど、なんとなく感じがよくて、いつも黙々と試合を見ている。昨日もまた、その姿がありました。
さあ、試合が始まります。台湾から今年鳴物入りでファイターズにやってきた古林(グーリン)投手の初登板。どんな投球を見せてくれるのかしらと、胸が高鳴りました。しかも清宮くんも2番スタメン! わくわくしながらプレイボールを迎えたんです。
……けれど、試合は思わぬ展開で始まりました。
グーリンくんはいきなり四球で走者を出し、盗塁も許し、そこから浅村選手にヒットを打たれて1、3塁。ここから味方のミスが続くのです。キャッチャーの吉田くんがパスボール。そして清宮くんの……痛恨のエラー。胸の奥がひやりとして、手にしたタオルを無意識にぎゅっと握りしめていました。清宮くん、サード、向いてないのかもしれない…
初回に3点を失いながらも、まだ序盤、望みはあると思っていました。清宮くんが4回にライト前にチーム初ヒットを放ち、続く淺間くんもヒットで続いて、そして新4番の野村くんがライトへいい当たりのライナー。ライトの選手の見事なファインプレイ!
あ!……清宮くんが2塁から飛び出している! 痛恨のダブルプレー。ここで、流れが完全に切れてしまいました。清宮くん、どうしちゃったのかしら....
その後、奈良間くんと吉田くんが意地の一発を見せてくれたけれど、楽天打線の勢いには太刀打ちできず、8対3。完敗でした。
実は先日、延長戦になった試合で、明日の仕事が気になって途中で帰ったら、なんと延長12回裏に郡司くんがサヨナラホームランを打っていたの。家でニュースを見て、悔しくて悔しくて。だからこそ、昨日は「最後までいよう」と思っていたのだけど……さすがに7点目を取られた時点で、私の心も折れてしまいました。
帰り際、少しためらいながらも、思いきって「タブレットスコアおじさん」に声をかけてみました。こんな風に話しかけるのは初めてだったけど、この悔しい気持ちを少しでも分かち合いたくって。
「今日は、帰りますね」
すると彼、ふっとメガネ越しに微笑んで、こう言ったの。
「今日は……確かに帰ってもいいですよね!」
その瞬間、張りつめていた気持ちがふっと緩みました。ずっとひとりで観てきたけれど、誰かと少しでも心が通じ合えたような、そんな気がしたのです。不思議なもので、そのひとことに、ずいぶんと救われた気がしたの。あの人も、きっとシーズンシートなのね。これからも、ずっと同じ時間を共有していくのかしら。なんだか、心が少しだけ温かくなりました。
また次の試合も、清宮くんのTシャツを着て、ライトスタンドで応援します。