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僕のファイターズ大航海日誌 #50
成瀬英樹
成瀬英樹
7月12日 9:24

僕は昨年からファイターズのファンクラブに入っている。とてもサービスが充実していて、ポイントに応じてさまざまな特典がある。今年は「直筆サイン色紙」が抽選で当たる企画があり、会員は希望の選手を二人まで挙げることができた。僕は少し迷った末、第一希望に「伊藤大海」、第二希望に「清宮幸太郎」をセレクト。すると、なんと第一希望の伊藤大海のサインが当選した。
 

というわけで、僕の仕事場の壁には、黒い色紙に白いペンで書かれた、伊藤大海の見事なサインが飾られることになった。


そんなわけで昨夜の試合は「エース」伊藤大海。彼が先発の日の試合前には、外野フィールドでの遠投を見るのを楽しみにしているのだが、昨日はそれがなかった。エスコンでの試合はすべて観戦しているが、伊藤が試合前の遠投をパスしたのは昨日が初めてだったはずだ。


疲れてるのかな。さすがに。


昨夜の伊藤は12安打、6失点。ボロボロ、と言ってもいいかな。今月に入って数字を上げている5番・西野の3打席すべてに1点ずつの打点を献上し、トドメには宗に3ランを叩き込まれて。


伊藤は6月27日、灼熱のベルーナドームで、相手チーム・ライオンズのエース今井達也が熱中症で試合中に倒れるという衝撃の試合で8回を投げて以来、明らかに調子を落としているのが気になるところだ。それでも前半戦は9勝5敗、防御率2.85、投球回はリーグトップの110.2回。タフな「イニングイーター」であると同時に、チームに4つの勝ち越しももたらしている。やっぱり大した男だよ、って僕は思う。どうかオールスター休みの間に疲れを癒してほしい。



さて、作曲で一番大切なのは「ご機嫌」でいること、すなわち「ご機嫌力」である。というのが僕の一風変わった持論である。


先日、エスコン内をウキウキ歩いていたら、例の大ヒットソング「アパツ、アパツ」が流れていた。この曲、ベタベタなキャッチーさに、聴くたびに思わず恥ずかしくなったりもするが、展開は実に計算されているし、ブルーノが歌うプリコーラス部分のメロディのまろやかさにも、聴くたびにうっとりさせられる。良曲であることは間違いない。何より、ここまで一般的に浸透した洋楽のヒットとなると、近年なかなか思いつかない。

「アパツ」って、要は宴会の時の「一気飲み」の掛け声なんだってね。こんなキャッチーな掛け声で煽られたら、誰だって気持ちよく一気しちゃいそうだ。いかんいかん。っていうか、韓国とか米国では今でも一気とかしてるのかな。日本じゃそんなのもう誰もしていない…はずだよね。してるのかな。なんて考えながら歩いてた。


するとそのとき、「降ってきた」のだ。アイデアが丸ごと、メロディと歌詞とアレンジがしっかり固まったものが、頭の中に鳴り響いた。彼らが「アパツ」なら、俺たち日本人にはアレがあるじゃないか。誰だって楽しくなる、魔法のシュプレヒコールがあるじゃないか!


僕はエスコンフィールドの人波をかき分け、今思いついたアイデアを忘れないように急ぎコンコースの壁際に移動して、iPhoneに向かって思いついたメロディを歌って録音した。自宅に帰って、それを弾き語りのデモの形にして、作曲パートナーの石崎光さんに送った。光さんはいつものように、僕の頭の中のイメージなど軽く吹き飛ばすくらいの最高の作品に仕上げてくれた。


そんなわけで、僕は昨日の試合中も、その曲を何度もリピートして聴いていた。とある楽曲コンペに提出したので、ここからこの曲の運命はクライアントさんに委ねられることになる。それでも、その結果がどうであろうと、僕の手の中には、僕自身のアイデアで作った、僕自身が歌った、そして大好きなサウンドマン・光さんが仕上げてくれた極上の作品がある。それだけで、まずは最高にご機嫌なのだ。


ひと月ほど静かなスランプがあって、自分が書いた曲をうまくジャッジできなかった。でももう大丈夫。人間だから感情や体調や運も揺れ動くものだし、思うようにいかない日もある。ね。


伊藤大海だってそうだよな。ビシッと抑える日もあれば、昨日のようにうまくいかない日もある。それでも、エースである彼が投げる試合は、僕にとって特別なのだ。勝つも負けるも、エースの投球次第。そんな「責任」を彼の背中にひしひしと感じることができるから。「このチームのエースは俺なんだよ」、って。


オレもがんばんなきゃ、な、って思う。だって、オレの人生のエースはオレしかいないから、ね。

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